奈良支部だより第73号に「第247回佐保カルチャーの報告」が掲載されましたので、ご紹介いたします。

参加された方はあの日の感動がよみがえり、参加されていない方は次回への期待が沸き上がることと思います。

 

247回佐保カルチャー報告

              「狛犬学へようこそ」

 

令和5年12月12日(火)、佐保カルチャーが4年ぶりに佐保会館で開催され、42名の参加者がありました。この日は冬にしては比較的暖かく、構内にはまだ紅葉が残っていました。今回の講演会は、動物学が御専門の磯邉ゆう先生を講師にお迎えし、「狛犬学へようこそ」というテーマで行われました。先生は20年近く前から、まだそれほど多く研究されていなかった狛犬に魅力を感じ、研究を始められたとのことです。

 講演の前半では、狛犬の歴史的変遷をわかり易く紹介して頂きました。「狛犬」は元々有角の想像上の生き物をいい、無角の獅子と対にして獅子狛犬と呼ばれていました。今では合わせて狛犬と呼んでいます。最初獅子が中国から到来しましたが、平安時代になると獅子狛犬の姿が明瞭になってきます。当時宮中守護獣として屋内に置かれていましたが、その後神社神殿の縁などを経て、徐々に外に出てくるようになりました。現在よく見られる石造の参道狛犬は江戸時代半ば頃から多くなったもので、大衆文化の一つとして、千八百年代以降大流行しました。

 後半では、幕末に活躍した著名な石工である丹波佐吉についてお話を伺いました。佐吉の作品は、細工が細かく、リアルに表現されているのが特徴で、石仏も含め奈良県に多いそうです。代表作の一つは斑鳩町興留にある素盞嗚(すさのお)神社の狛犬で、力強く躍動感一杯です。佐吉の魅力は石の限界を超える表現を目指すその理想に向かって懸命に努力するところにあり、作品研究はまだ謎の部分が多く、研究意欲が喚起されるとのことでした。

 今回の参加者へのアンケート結果からも、真摯に研究に取り組まれている先生の姿勢に深い感銘を受けたという感想をたくさん頂きました。

 

 最後に、先生には講演の準備段階から佐保会員として多大なるご協力を賜ったことに感謝の念を表したいと存じます。

                                                                  (小谷淳子 S57文英)

 

 

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第247回佐保カルチャーを開催しました。

   狛 犬 学 へ よ う こ そ

      講師  奈良学園大学特別客員教授 磯邉ゆう氏 S47理生・S49理修生)  

 

日時      令和51212日(火)午前1330分~15 

会場      佐保会館 (奈良女子大学構内)     

参加費    500円(学生は無料)      参加人数 42名  

 

前日夜半からの雨がすっきりしない中でしたが、第247回佐保カルチャー「狛犬学へようこそ」を、1212日(火)に、令和元年11月の第237回佐保カルチャー以来となります佐保会館で、42名の参加者を迎え、無事開催することができました。

54歳の時に狛犬と出会い、その魅力にはまった」とおっしゃる磯邉先生の講演は「知らなかった!」でいっぱいの一時間半でした。

前半では、狛犬とは「無角の獅子と有角の狛犬」の対であること、古墳時代の青銅鏡にすでに「獅子」ということばが見られること、平安時代には宮中守護獣として屋内に置かれていたこと、私達が「狛犬」と呼んでいる参道に置かれた石の狛犬は江戸時代中頃に作られ始めたことなど、多くの写真と共にご説明頂き、獅子狛犬のイメージが大きく変わりました。

質問の時間を挟み後半は、身近な人による伝承や多くの作品群など豊富な情報があるのに謎の多い、江戸幕末の名石工「丹波佐吉」についてお話いただきました。「佐吉」について行われた丹念な調査や比較・分類について詳しく解説していただき、「とことん、徹底して、石の限界を超えよう」とする佐吉の努力の跡を辿ることができました。

 講演後チラシの写真をもう一度見直すと、「丹波佐吉」の狛犬が、他の石工の狛犬と違い、石でできているとは思えないような見事な毛並みと柔らかな肢体を持っているということに、参加者の皆様もお気づきになられたのではないでしょうか。

 

第247回佐保カルチャーの報告は、「奈良支部だより73号」に掲載予定です。 どうぞ、お楽しみに。