第229回佐保カルチャー
「煌く植物で明るい社会を」
講師 : 岩野恵氏(大阪大学産業科学研究所永井研究室)(昭和51年理学部生物学科卒業、
53年大学院理学研究科修士課程生物学専攻修了)
日時 : 平成29年11月18日(土)午後2時開演
場所 : 佐保会館2階ホール
主催 奈良女子大学同窓会 佐保会奈良支部
後援 奈良女子大学 理系女性教育開発共同機構
中高生15名を含む58名の参加があり佐保会館は活気に溢れていました 。
ホタルなどの発光生物は酵素(ルシフェラーゼ)が発光タンパク質(ルシフェリン)を酸化することで光ります。
オワンクラゲの生体内でイクリオン(化学発光たんぱく質)が発する青色光をGFP(緑色蛍光たんぱく質)が受けて
緑色に光ることを下村脩博士は解明し、GFPを分離精製しました。その後他の研究者により遺伝子が解明され、生き
た生物の細胞にGFPの遺伝子を組み込ませ、蛍光で目視できることが分かり爆発的に普及しました。そしてノーベル
化学賞受賞となりました。
生物発光の方は生体にやさしく自ら発光するのですが、その光が弱く研究に応用できる明るさではありませんでした。
そこで、化学発光たんぱく質で発生したエネルギーで蛍光たんぱく質を共鳴により振るわせ発光を明るくする、このハ
イブリットの仕方を色々工夫し2012年従来の10倍くらいの明るさの高輝度化学発光たんぱく質“ナノランタン”を、更
なる技術開発により性能向上し16年5色の高光度化学発光たんぱく質“e-ナノランタン”を作製しました。5色で同時に
細胞内の構造体も観察できるし、蛍光発光のように光の照射の影響も受けず幅広く医療や薬、生物学などの研究分野に
応用されています。
このe-ナノランタンの遺伝子を組み込み、黄色、青緑、緑色の発光ゼニゴケの作製に成功しました。ゼニゴケは遺伝子
情報が明らかで最も原始的な陸上植物ですが、更に光るバラやカーネーションが出来たら素敵です。講演は新しく重要
なとても興味深いお話でした。また地球温暖化を防ぐため化石燃料の使用を減らす超省エネ照明である自発光植物の作
製を10年後位には成功させたいと言う夢も語られました。
生徒達は講師の先生が準備下さった生物発光の実験にも積極的に参加し、講演後の沢山の質問をしていました。アンケ
ートからもしっかりした考えが窺えました。中高生にも大学の研究を知り科学に興味を持って貰う機会が提供できたの
であれば嬉しく思います。